熊野三山を人力で巡る!(その2) 速玉大社~那智大社を折りたたみ自転車+徒歩で!

八兵衛

2022年05月10日 00:04



(その1)からのつづきです。



2日目。

今日の予定は速玉大社~JR那智駅まで
約16kmの熊野古道を折り畳み自転車で走行です。
色々とデポしたり車をJR那智駅前に運んだりして
午前11時前、速玉大社を出発。






晴天のGWの観光地なのでかなりの混雑。
お参りは最低限にして素早く境内から抜け出す。

しばらくは新宮市内をウロウロ走る。
僕の進むルートは熊野古道ではありますが、
細かく見るとアプリやガイドマップによって
記載ルートが違ってる場合があります。
きっとどれも間違いではないのでしょうけど
僕が主に使ってるのが登山アプリの「ヤマレコ」で、
マップ内で赤線で記されてるルート。
この赤線ルートを中心にトレースしつつも、
実際はかなりテキトーに進んでます。
特に旧市街地では古道ルートが曖昧なようで
現地の道標を最優先しつつ、
いつの間にか分岐や右折左折ポイントを見逃すことも度々。

古い住宅街を通り、いくつかの神社を訪ねると
ルートは海沿いに出た。王子ヶ浜という長大な浜。
このあたりには道標が見当たらないけど
砂浜沿いのJR線路際の海側が古道ルートらしい。
要は浜辺を歩けばいいのか?
線路際に快適な護岸のコンクリート道があったけど
残念ながら少し進んだところで道は終了。
砂浜に降りるスロープを降りざるを得ない。








・・・まあ仕方ない。
自転車を押して砂浜を歩いてみると
分かっちゃいたけど重い!
歩くだけでも自重で足が取られるのに
自転車の車輪はたやすく砂に埋もれ、相当キツい。
この浜がこの先約2km続くらしい。
2kmもこんなヘビーな浜歩き!?
300mほど進んだ所でようやく気付く。
これ、他にルートがあるんじゃないの?
もしこの浜が熊野古道のメインルートなら
(大昔は浜を歩いてたと思いますが)
晴天のGWなのにハイカーの足跡が全く見当たらないのは変ではないか?

近くに県道が通っていて
和歌山県の観光マップでは
その県道が古道のメインルートとして描かれてるのは分かってますが、
でもそれは現代の迂回路であって、
アプリや地図によっては海沿いルートが紹介されています。

もしや浜歩きではなく、線路際にトレイルがあるのかも?と
自転車を担いで護岸コンクリートを越えてみると、
やっぱりあった!草むらだけどトレイルがある!


草むらトレイル


道標が見当たらないので、これが正規ルートかどうか不明ながら
地図と現地を照らし合わせると、この道しか考えられない。
線路と護岸に挟まれた狭い草むらトレイルを漕ぎだした。

快適快適(^^
地面はただの砂と違って、土まじりの砂地で
それなりに通行者が居るんだろう。
わりとしっかり踏み固められていて
舗装路ほどではないけど、時速6kmぐらいかな?
ゆっくりだけどまあまあ快適に走れる。







約2kmほど線路際の草むらトレイルを走り、
浜ルートが終わる所でようやく道標のある
ちゃんとした熊野古道に合流。

はぁ~疲れたわー。

そもそも徒歩ルートなのに自転車で進んでるんだから
無理があるのは承知しておりますよ(--;
しかもここからは更に無理なルートに突入です。
「高野坂」という峠越えの山道。

自転車で山道に入るのは昨年のGWでもやってまして
あれはものすごキツかったですが
2回目ともなると、
前回も出来たんだし、まあ何とかなるでしょ!
と脳内ハードルが異常なほど下がってます(^^;

まずは階段を登る。いきなり厳しい登り勾配。
サドルの下のシートポストを右手で持ち上げ、
ハンドルを持つ左手で前輪を持ち上げながら、
登山道や石畳の道を登る。
腕が死ぬわ!






僕は折り畳み自転車をこんなふうに
腕力で登山道に突入させたりパックラフトに積んだりするので
ダホンちゃん13.4kgの重量はかなりキツいのです。
(工具バッグと荷台も装着してるので実際は約15kg)
半分程度の6kg台の折りたたみ自転車もあるので、
最近また物欲が・・・(^^

しばらく行くと古道っぽい石畳の道。
昨年の石畳ルートに比べて、
今日は勾配が緩めなのでだいぶんマシです。
だんだん省エネで坂を登るコツがわかってきて、
標高約60mの峠に到着。




高野坂の峠




でもやっぱり疲れたわ~
砂浜歩行の次は草むらトレイルで、
その次は登山道とは。
好きでやってる事ではあるけど、
ワシ何やってんの?と一瞬だけ我に返ってしまう。

昨年の自転車での石畳の高低差は約70m。
それに対して今回は峠までの高低差は約60m。
だから昨年よりは少し楽だったのですが、
このあと大きな違いがありました。
昨年は登り坂だけだったけど、今回は下り坂もあったんです。
何気に下り坂の方がキツかったです(泣)

重力によって自転車は下り坂を転がり落ちようと勝手に進んでしまうのです。
ブレーキレバーを握ったところで
舗装路と違ってトレイルは枯葉や泥濘があって
ズルズル滑って坂道を強制進行しようとする。
それをなんとかなだめて押さえ込むので、腕力と踏ん張る脚力が消耗。

ルート上には石畳も多いのでボコボコのガタガタで、
車体への衝撃は相当だろう。
後部車輪に取り付けたキャリアのネジが衝撃で緩んできたので
工具袋を取り出してあちこちのネジを締め直す。

途中、分岐ルートがあって
太平洋を見渡せる「鯨山見跡」という絶景ポイントがあるらしかったけど
余計な分岐ルートを自転車連れて往復する余裕はなく、
ひたすら麓を目指して下山。

ようやく高野坂降り口に到着。
はひ~、疲れたわ!
ここを通った巡礼者はどれだけ居るか分からないけど
自転車で越えた人はなかなかの激レアではないだろうか。
なんの自慢にもならない激レアですが(泣)

下山したところは三輪崎地区。
しばらく海沿いを走る。
舗装路がありがたい。








すでに午後1時過ぎ。
地元っぽい食堂が見当たらず、
きっと全国どこにでもあるチェーン食堂に入店。
でもまあ腹減ってるから美味い!

しばし海沿いの国道を走行。
歩道はあまりなく、車道を走ることになるのですが
和歌山南部ではサイクリング誘致に力を入れてるようで
国道にはこのような↓表示があって、


サイクリストも多く見かける。
でもサイクリストの皆さんは
細身のタイヤにドロップハンドルのスポーツ自転車。
さらにピチピチで派手な自転車ウェアに
流線型のヘルメットにカッチョいいスポーツサングラス姿。

こちらから手を振るも、
折りたたみ自転車でリュック背負った普段着スタイルの僕は
相手からは同業者とは見なされないようで
ことごとく不審顔でスルーされてしまった(泣)








国道を逸れ、小狗子(こくじ)峠への登り。
ここも山道で、少し荒れた竹林の中の道。
石垣がたくさん残っていて
かつてはこの峠道に旅籠や茶屋が軒を連ねてたそうです。
狭い小狗子峠を越え、
急坂の藪道をひいひい言いながら下る。








小狗子(こくじ)峠


国道に降り立ったら間もなく三つ目の峠、
大狗子(おおくじ)峠への登り口。





旧国道のトンネル脇に峠への矢印が表示されてるけど
峠の反対側の下山口である
トンネルの向こう側がすぐそこに見えていて、
誘惑に負けた僕は峠に登らず、
車道のトンネルを通過してショートカットしました。

出ました堕落王の真骨頂!

今日超えるべき3つの峠のうち、
最初はちゃんとマジメに登り、写真もたくさん撮ったけど
ふたつ目の峠は一応登りはしたけど
疲れて写真も僅かに撮っただけ。
最後の峠はもはや登りもせず、
トンネルショートカットで茶を濁す体たらく。
こういう所に意思の弱さやズボラっぷりが垣間見えますな(--;

さあ気を取り直して(話を逸らして)
JR那智駅までの最終区間を走りますか!
とはいえ国道は歩道も路肩もなく、
交通量も多いので全く余裕なく走りに集中。
あっというまにJR那智駅に到着してしまった。
午後3時過ぎ。

まだ夕方まで時間あるので
ゴールの那智大社へ少しでも進んでおきたかいけど
どうも前日、水に濡れたり川の中を歩いたりしたせいか
神経痛っぽい痛みが右足に出ていて
今日はもうこれ以上足を使いたくないのです(泣)

那智駅横の道の駅に停めておいた車に自転車を放り込み、
近くのビジネスホテルに投宿。
GWの真っ最中に当日予約で泊まれるとは思ってなかったので
足の痛みと山越えで疲労してた僕には
宿に泊まれるのはありがたい。素泊まり3900円。






那智勝浦の町では普通の民家みたいなとこでマグロを販売してて
だれでも購入できます。 ひと皿200円♪







3日目。

早朝5時半に宿を出発。
宿からすぐの道の駅に到着すると、
駐車場はほぼ満杯。
みんな車中泊のようで、最後の1台分のスペースに駐車。

5時50分出発。
今日はゴールの那智大社まで徒歩です。約8km。
幸い足の痛みは治まっている。
日の出は5時過ぎなので6時前だとすっかり明るい。








温泉好きの間では有名な「ステンレス流し台の湯」
道端に温泉湧いてます。



途中少しだけ山道になる以外は舗装路ばかりなので
少し退屈しつつ歩く。
那智川に並走して歩くと、脇から巨大砂防ダムの支流が合流。
こういった巨大砂防のコンクリートで固められた谷がいくつもあるのは
(その1)でも書きましたが
2011年の紀伊半島大水害の傷跡です。
特にここ那智勝浦町は犠牲者25名と多く、
目の前の那智川は土石流と瓦礫で埋め尽くされてたと思われます。













午前7時半。
大門坂の入り口到着。
こんな朝なのに大門坂駐車場は満車状態で、
この坂を歩くハイカーはすでに多数、登り始めている。

大門坂。
この坂は「いかにも熊野古道」感のある石畳の階段で
出来れば誰も居ない早朝にひっそりと歩きたかったけど
朝の7時半で既に前後にひっきりなしにハイカーが歩いてる。
むむむ。見通しが甘かったか。

最初は登り坂に体が悲鳴を上げる。
これはバリバリに登山をやってた若い頃でも同じで
しばらくはキツくてもゆっくりゆっくり歩いてると
15分ほど経過すると体が慣れてきて
だんだんペースも上がってくる。
ようやくペースが上がり始めたところで
大門坂のてっぺんに登りついた。






やった!登り坂終わった!
と思いたいところであるけど、
すぐ横に「6合目」と書かれた石があるのが気になる。
やっぱりと言うか、そこからも階段に次ぐ階段。
登っても登っても次々と階段が現れ、
ひーひー言わされてようやく那智大社到着。
午前8時過ぎ。




那智大社




これで熊野三山を制覇!ではありますが、
三山を巡っておいて言うのはナンですが
正直、これらの豪華絢爛な感じの神社にあまり興味がありません。
僕はどっちかというともっと質素で小さな神社に惹かれます。
バチ当りだとは思いますが
なんというか、三山ともお参りしながら
ハデな感じがあまり好きではありません。
もちろん、そういう神社だと分かってたので
それを承知で三山巡りをしてたわけですが。

にも関わらず僕が熊野古道に惹かれるのは
聖地の神社自体に惹かれるのではなく、
聖地に向かう巡礼の道そのものに惹かれます。
もちろん魅力を感じる部分は人それぞれですが。

きっと1000年以上の昔から数多の巡礼者が
熊野を目指して何日もかけて山を越え、
祈りや願いを胸に歩いたことだろう。
その祈りや願いを込めて多くの人が歩いてきたことに大きな価値があるのかなぁ。
だからこそ三山だけでなく、古道も含めて世界遺産に認められたのでしょう。










とりあえず疲れたけど、
座る場所も無いので、そのまま隣の青岸渡寺に行き、
今回の旅の最終目的地である
那智の滝を間近で見られる飛龍神社まで歩く。

「熊野三山巡り」と言うなら
先ほどの那智大社到着で終了なのだけど、
僕にとっての熊野のカツアゲ神の始まりが
「飛龍神社」なのです。

時は38年前。
中学卒業旅行で紀伊半島4泊5日の旅をした際、
那智の滝にも来ました。

当時の写真は無いけど、記憶の中にある風景は
正面に滝を間近に見て、
その左側に御守り等の販売所があった。
そこで御守りを購入し、財布に入れた直後
財布ごと紛失してしまったのです(泣)
ほぼ全財産。
当時の中学生にとっては超大金である一万円以上を失い、
残ったお金はポケットに入ってた数百円程度。
あの御守りはカツアゲ神の御守りだったに違いない!(泣)
熊野でのカツアゲ人生を根絶させるためには
最初のカツアゲである、この飛龍神社を参らなくては!


左下が38年前にカツアゲ御守りを買った場所


滝への参拝の石畳道を下ってゆくと
見覚えのある景色。
ああ、ここだ。
ここで御守りを買って財布に入れたんだよな~

那智の滝は相変わらずの迫力。
もう御守りは買わないけど、
38年ぶりに嫌な記憶を払拭。

これにて熊野三山巡り完了です!^^



おしまい


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